Book-Composition 3
Bibliographic Details
- Title
- Book-Composition 3
- Artist
- Yasutomo Ota / 太田泰友
- Year
- 2016
- Size
- h400 × w300 × d60 mm
- Weight
- 1600g
- Materials
- 紙、ボール紙、麻糸、額縁
- Edition
- unique
- Condition
- new
本作は« Book-Composition 2 »の色違いです。
横になった背中の標本。
«Book-Composition 3»
2016
表紙こそが顔と思われがちな本ですが、実は図書館でも、自宅の本棚でも私たちが頻繁に向き合って見つめているのは、本の背であるという視点が本作の起点です。
«Book Composition 3»は、一冊の本をつくるときと全く同じ過程を経ています。大きさを決め、ページ数を決め、紙を裁断し、貼り合わせ、糸を通すための穴を開け、糸で丹念にそれらを綴じていくのです。綴じの工程が完了した後に、地となる厚紙に、先に綴じた本がぴったりと嵌め込める長方形の穴を切り抜き、そこに本を差し込み、固定します。地の白い紙と本との間には寸分の隙間もなく、見た目はまるで本が壁から生えているように見えます。
精巧な綴じの技術によって生み出される編み目が美しい背の景色は、距離を置いてみるよりも、間近で或いは虫眼鏡で覗いてみて欲しいほど。綴じ方は、コプティック製本からの派生と考えられている手法で、オリジナルではないのですが、その名称は定かではありません。開きも良く、耐久性に優れ、現在に至るまでこの綴じ方を気に入って採用しています。本人曰く、折丁を綴じるのではなく、一枚の紙に穴を開けて綴じ込むその行為自体が直感的で好きなのだとか。
そもそもの発端は、本棚やテーブルを使わずに、本を美しく展示するためには何をすべきか、この問題に真正面から向き合った作者がまず取り掛かったのがこの「Book-Composition」シリーズでした。壁、すなわち垂直面を使える本の展示方法です。壁を使ったブックアートの挑戦は現在進行形で、2022年3月に発表した「MEDIUM」シリーズにも派生しています。
Book Compositionシリーズについて、作者は下記のように語っています:
一枚の紙があっても、それは紙でしかなく、私はそれを<本>だと認識しません。複数枚の紙が重なっていても、まだそれは紙の重なりであり、<本>ではありません。紙を折ってできた折丁が複数積み重なった状態で、折られた部分の積み重なりを見たときに、私はそれをはじめて<本>だと認識します。どうやら<背>によって<本>という物体を捉えているようです。
書店で本を選ぶときも、図書館で大量の本の中から目的の本を探し出すときも、自分の部屋の本棚を眺めるときも、他人の本棚の様子を見るときも、本の<背>から情報を読み取り、そこに見えるもの以上のことを想像します。自分の人生に大きな影響を与えた本も、その中身を読んだ時間よりも、その<背>の姿を見た時間の方が長いかもしれません。
2019年八戸ブックセンター ギャラリー展「太田泰友ブックアート展 背を見て育つ」