紙々 / 立花文穂

Bibliographic Details

Title
Kamigami / 紙々
Author
Fumio Tachibana / 立花文穂
Designer
Fumio Tachibana / 立花文穂
Director
Hidehisa Tachibana / 立花英久
Images
Yasuhide Hide / 久家靖秀
Publisher
BURNER BROS. / バーナーブロス
Year
1998
Size
h207 × w145mm
Weight
170g
Pages
36 pages
Language
English & Japanese / 日英
Binding
Side-stitch binding, Single-flap fold, Sealed bag, Edition with signature, Includes a case and an accompanying letter set / 平綴じ、片袖折り、袋とじ、エディション・サイン入、函と付属のレターセット付
Edition
limited edition of 700 copies. / 限定700部
Condition
good
ISBN
4939040011

紙々に隠れた神。
福耳になったシヴァの
まっすぐな眼差し。

15ページ目の天に隠れている「福耳」を開くと、額に第三の目を持つシヴァ神がこちらを覗いていて、ぎょっとする。ブラフマー、ヴィシュヌ、と並んでヒンドゥー教でもっとも影響力を持つ主神でもあるシヴァ神は、破壊の神様。この本に登場する朽ちた紙や破れた紙や捨てられた紙をじっと見守っているかのようだ。

予期せぬ場所から顔を覗かせるシヴァの表情は、まるで意図的に仕掛けられたようにも見える。おそらく、じぶんで製本する立花文穂であれば、わざと福耳ができるように製本工程を調整することはわけもないことだろう。この福耳というちいさな幸運が、この本をより一層引き立てていると感じるのはわたしだけだろうか。

本書は、アーティストの立花文穂がインドを訪れた際に収集した手紙やレシート、古新聞、チラシなどの「紙々」がルポタージュされている。700部の限定で、立花文穂と兄の彫刻家・演出家の立花英久が設立したBURNER BROS.の第一弾刊行物でもある。写真は久家靖秀さんが撮影し、インドへのオマージュと旅の記憶が生々しく映し出されている。

本文は薄いコート紙で袋綴じや片袖折りが混在し、独特の触感とリズム感は、なんとも立花さんらしい造本だ。シールや製本テープを印刷された部分からズラして貼っていることで本が無理に気を張らず、自然体でいるように見えるから不思議だ。立花さんの手にかかると、紙も製本もすべてがぴたっと調和され、気取らない独特の造本スタイルが生まれる。さらに本書に挟み込まれている封筒には、印刷されたコラージュが一枚入っており、立花さんの粋な遊び心を感じる仕掛けとなっている。

立花文穂
1968年、広島市生まれ。アーティスト。文字、紙、印刷、本を主な素材、テーマとして作品を制作している。製本業を営む家に育ち、紙や印刷物から着想を得て「よせ集める」「つなぎ合わせる」行為で新たな表現を探求する。2000年代以降、活版印刷や写真、ブロンズ彫刻など分野を横断した制作を展開し、自身が責任編集する媒体『球体』もつくりだす一方で、美術作家として美術館やギャラリーでの展覧会も行っている。最新の写真集に『傘下』がある。2020年12月13日まで群馬県立近代美術館での「佐賀町エキジビット・スペース1983-2000」展に参加している。

BURNER BROS. / バーナーブロス
1998年、アーティストの立花文穂と兄の彫刻家・演出家の立花英久が設立した出版社。特に印刷物や本そのものの「物質感」「存在感」にこだわった出版をしている。手掛ける本は少部数ながらもデザイン、紙、製本に至るまでとても高いクオリティを追求し、アートと出版の境界を越えた表現が他にはない魅了を持つ。『紙々』と同年、『火々』(限定700部)を出版。

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