Querido Amarelo

Bibliographic Details

Title
Querido Amarelo / Dear Yellow
Artist
MIGUEL ÂNGELO MARTINS
Publisher
Miguel Ângelo Martins and Raum Editions
Year
2019
Size
Booklet: 304 x 215mm / Envelope: 324 x 229mm
Weight
30g
Pages
72 p
Language
Portuguese & English / ポルトガル語、英語
Binding
thread sewn binding / ソフトカバー
Printing
Risograph 1-ink (red)
Materials
Paper: 80, 115 g Sirio Color, Gialloro
Edition
150
Condition
New
ISBN
978-84-09-11247-0

Concept and Design: Miguel Angelo Martins / Proofreading: Isabel Santa Clara / Translation: Leticia Pérez Alonso / Printing process: Risography, 1-ink, Red / Typography: Neutra Text, Demi and Bold / Image credits: Sheet #3 (above) / Indian Court at the Melbourne International Exhibition, 1880. © La Trobe picture collection,

インディアン・イエローをめぐる
ミゲルの冒険

この本は、2019年にポルトガルのマデイラ諸島にある「Quinta Magnólia Garden / キンタ・マグノリア」で開催された「Em Viagem」展のために制作された本で、植物をテーマに、本という船に乗り込み、これほど大胆な冒険ができるミゲルを羨ましく思ってしまう。

タイトルの『Querido Amarelo』は英語で「Dear Yellow」。テーマは、「インディアンイエロー」として知られる黄色の顔料をめぐる大冒険の物語。ミゲルが二年間かけて収集した情報と、彼の個人的なアーカイブから類似した内容を洗い出し、歴史と研究成果、そしてミゲルの個人的な探究心を織り交ぜた文書をまとめた作品である。

紙の色はもちろん、インディアン・イエローに似た色で、赤いインクもインドび祭事で頻繁に使われる赤の色調に従っている。造本は、本体も一切綴じずに、一枚一枚がバラバラになり、壁に貼り出して眺めるも良し、新聞のように広げて読むも良し。それらの紙の束は、まるで、調査報告書がガサッと入れられたような黄色い封筒の中に収められている。

「1883年、イギリスのキュー王立植物園の園長ジョセフ・フッカーは、カルカッタにあるインド博物館の学芸員助手T.N.ムカルジに、ピウリ( Piuri ) と呼ばれる黄色い物質の調査を依頼した。この物質は通常、インディアン・イエローと呼ばれる色調を得るために使用されるが、その製造の起源が謎に包まれていたため、フッカーは長年関心を寄せていた。そして数ヵ月後、フッカーはT.N.ムカルジから回答を得た。あとに『Journal of the Society of Arts』に掲載された彼の証言によると、この顔料はインド北東部に位置するビハール州のミルザプールで、マンゴーの葉と水だけを与えた牛の尿から製造されていた。数年後、その製造は禁止され、この着色料は植物由来の黄色漆に取って代わられ、最近では有機合成顔料に取って代わられた。」

インディアンイエローについて少し補足しておくべきだろう。この顔料は古くからインドで製造されてきたもので、15世紀ごろからはヨーロッパにも輸出されるようになったという。フェルメールも好んだというから、もしかしたらかの有名な「牛乳を注ぐ女」はマンゴーの葉を食べた牛の尿がなかったら、完成しなかったかも知れない。しかし、インディアンイエローを作り出すために、マンゴーの葉しか与えられない牛たちは過度の栄養失調状態となり、その大半が若くして衰弱死したそうだ。その残酷な生産工程が世間に知れ渡ったことで各地で非難が起こり、1908年以降市場での取引は禁止され、今日では色を似せて調合された合成有機顔料が製造されている。

インクに尋常ではない愛と興味を持ち続けるミゲルならではの一冊。黄色い封筒を開けると、インドの香りまで漂ってくるのは気のせいだろうか。

通常価格 ¥9,300 JPY
通常価格 セール価格 ¥9,300 JPY