理想の家

Bibliographic Details

Title
理想の家|有意義な距離と不可欠な結合について(原題:Vom sinnvollen Abstand und dem notwendigen Zusammenhalt)
Author
700g
Artist
Yasutomo Ota / 太田泰友
Year
2014
Size
h288 × w288 × d20 mm
Language
German / ドイツ語
Printing
シルクスクリーン印刷、デジタル印刷
Materials
アクリル板、布、紙、厚紙
Edition
5
Condition
NEW

2015年「ドイツ・ヤング・ブックデザイン奨励賞(Förderpreis für junge Buchgestaltung)」ショートリストノミネート。

本を書く、
本を綴じる、
本を建てる。

フランスを代表する哲学者で作家のミシェル・セール(Michel Serres, 1930年9月1日 - 2019年6月1日)の著書、『アトラス(原著:Atlas,1994)』より、「家の中には多数の適切な距離が存在する」という一節を起点に制作された作品です。

クロス貼りされた箱に、アクリル製スライド式蓋がついており、蓋を最後まで閉めると、作品タイトルである『Vom sinnvollen Abstand und dem notwendigen Zusammenhalt(有意義な距離と不可欠な結合について)』の題字が現れます。

作品全体は『アトラス(原著:Atlas,1994)』を読んだ際に、想像した間取りを本として再現したものです。それぞれの部屋には一冊の本が配置され、家の入り口(Eingang)に配置された本の中には、作品の発端となった「家の中には多数の適切な距離が存在する」という一節のドイツ語が収められています。ここでは、例えば、「キッチンと食事をする部屋の距離は近く、そこからトイレは離れたところにある」、「手の届きやすい棚の距離について」など居住空間における適切な距離について、細かく書かれています。そのほかの部屋の本の中には、それぞれその部屋にふさわしい家具とその寸法が文字とイラストで表現されています。

本作で試みた手法は、ウィリアム・モリスにはじまる総合芸術としての本のあり方です。作者は、『理想の書物』の中の「最も美しい芸術を問われたなら美しい家と答えよう。次に美しい本である」という一節に影響を受け、それ以来「家と本」ひいては、「建築と本」の関係性について思考と試作を続けています。本作では2次元の間取り図を基軸に、空間としての奥行き、3次元を「本」で体現。人の身体よりもはるかに小さなこの本の中に、人がくらす家の中を再現することは、すなわち家を建てるように、本を建てるという行為に等しいと言えます。

本を書く、綴じる、つくる。本に続く動詞は、「建てる」をはじめとして、これからまだまだ増えていきそうな予感がしています。




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