White Vessels / 具本昌 クーボンチャン
Bibliographic Details
- Title
- White Vessels 白磁
- Artist
- Koo Bohnchang / 具本昌(クー・ボンチャン)
- Editor
- Park Hyunjung
- Designer
- Nobuhiro Yamaguchi / 山口信博 + Sakie Hosoda / 細田咲恵
- Director
- Yi Yoonshin
- Publisher
- Yido
- Year
- 2015
- Size
- h300 × w224× d25 mm
- Weight
- 1180 g
- Pages
- 178 pages
- Language
- English / 英語
- Binding
- 枕貼り製本(折ったページが膨らんでしまうことで本の佇まいが阻害しないように、ノドに折ったページ分の厚紙を張り込む特殊製本)
- Edition
- 初版限定400部 / First edition of Limited 400 copies
- Condition
- 新品 / As New
印刷と製本は日本のアイワードが担当 / Printing by Binding by Iword Printing Japan
ちりぢりに散逸した
母国の「白磁」を追い求めた
紙上のコレクション。
韓国でもっとも有名な写真家、具本昌(クー・ボンチャン)がおよそ10年をかけて上梓した限定400部の写真集です。数百年にわたる歴史を持つ白磁は、かつては王朝貴族に愛用され、近年では広く庶民にも親しまれてきた朝鮮文化を代表する陶磁器です。その飾り気のない素朴な佇まいは、主に外国のコレクターを魅了し、熱心に収集されてきました。特に、浅川伯教・巧兄弟の導きで「染付の壺」に心を奪われた柳宗悦は、朝鮮陶磁器との出会いによって、民藝の礎となる「用の美」や「無心の美」へと目覚めていったことは、よく知られています。
それほど比類のないものでありながら、いまでは海外の美術館の収蔵品によってしかその面影を偲ぶことができなくなってしまった白磁。そのような背景から、海外に散逸した母国の遺産を追い求め、各地の美術館や個人コレクターのもとに赴いては、その一つひとつを丹念に自身のカメラに収め、作品化していった集大成が本書です。
撮影期間は、2004年から2014年までのおよそ10年間。撮影地は東京の日本民藝館からロンドンの大英博物館まで、16カ所に及びます。
造本デザインは、『くらしの宝石』(ラトルズ)でもタッグを組んだ山口信博が手がけ、印刷製本は、札幌に拠点を構えるアイワードが担当しています。本書が採用した「枕貼り製本」は折ったページが膨らんでしまうことで本の佇まいが崩れないように、ノドに折ったページ分の厚紙を張り込む、という特殊な製本で、繊細な紙の工芸品のような仕立てです。なんでも、この本のためにクー・ボンチャンは札幌のホテルに泊まり込み、製版調整と印刷立会をおこなったと聞きます。表紙の繊細な薄ピンクの色合いは、その成果といえるでしょう。
クーさん(と愛称で呼ばせてもらいますが)は、前述の『くらしの宝石』で、使いかけの石鹸を撮りつづけたように、時間の痕跡をとらえることに並々ならぬ情熱を注ぐ写真家。彼にとっては「白磁」の表面に残るヨゴレやひび割れは、先人たちが確かに生きていたという、あたたかい痕跡でもあるのです。
Text by 櫛田 理